『死』から見える人生や社会の問題:法医学に従事して、早や、四半世紀を裕に過ぎた今、よく口癖になる言葉が「法医やってて思うが、人の寿命は神のみぞ知るやなア」だ。つまり、災害死などに関わると、あと数センチどっちか、あと数秒早かったり遅かったりしたら、お亡くなりになっていないことに多々遭遇することがあるからだ。だから、私は『死ぬまで生きる。精一杯生きる。』が信念である。自殺が年々増えている。理由は様々だ。病苦・借金苦・厭世、時には、失恋もある。しかし、厳寒のなかで必死にダンボールのみで生きる、しのぐホームレスの人々は健全だ。それに引き換え、自分の高い生活水準を下げるのがいやだと言って、鬼籍に入る人々。自殺する人たちを直に面してきて思うことは、実体験の欠乏や挫折経験の乏しさから芽生えてくる『自殺用スイッチ』を入手することではないだろうか。このスイッチは誰でも手に入れることはできるし、いつでも押すことができる。しかし、遅くは無い、老若男女全ての世代にいろいろな艱難辛苦な実体験を経験し、挫折すれば、このスイッチは自ずと消え去る。そのことを早く、気づいて欲しい。合掌