8月8日月曜日晴れ

法医学者から見た裁判員裁判の現状:約3年前、裁判員裁判が始まると聞いたとき、素人が判事するとはもってのほかだと思い、大反対だった。しかし、そんな思いとは裏腹に、どんどん制度化は進み、私も現状を真摯に受け入れ、証人として出廷したときは、素人の裁判員にすばやく明確に理解してもらおうと、アニメーションつきのパワーポイントを作成し、好評を受けた。その結果、求刑よりかなり重い判決が下りたこともある。これは、元来の裁判ではまずあり得ないだろう。このように、世俗の考えが、既存の判例を超えることは世間に即してよいことだ。しかし、死刑のような極刑については、はなはだ問題が残る。この世から一個人を抹消するという行為が、その極悪人の素行を逸脱し、素人が正しく判断することはできない。私は、やはり、他国の陪審員のように無罪有罪を決定しても、罪の過量を決めるべきではないと思うし、日本のこの制度以外に、素人が罪の過量まで決める国はない。

平成23年8月5日金曜日晴れ

病死か事件かの決め手:これがすばやくわかれば、苦労はない。特に外表上、損傷が無ければ、なおさらである。CTを撮っても、司法解剖をしても著明な所見がネガティブなことがある。しかし、死亡したことは事実である。犯罪を見逃さないために、将来のために、なるべく成分を変えず、体液成分やデータを含み資料の取得しかない。王道はない。

8月3日 水曜日 晴れ

医師法21条について:この法が設立されて、60余年が経つ。この立法趣旨は、犯罪の早期発見にある。そういう点では、必要な法律である。しかし、日本医師会では、医療の崩壊や医療の萎縮につながるとして、いろいろ問題を醸している。医療は所謂、ハイリスク・ハイリターンになり、異状という概念がわかりにくくなっている。しかし、まじめな医師や医療チームたちだけではない。中には医療を食い物にする悪党も要る。そういう輩を糾弾するために、この法律は最初の立法趣旨通り、必要である。やましいことが無ければ、内部告発や遺族から不信感をもたれる前に、届出をすれば良い。繰り返すが、何も疚しいことが無ければ、警察は粛々と退散するし、身の潔白も時間をかけず証明される。